着物をクリーニングに出すベストな頻度は?お手入れの目安と着物をきれいに保管するための3つのコツを解説

着物をクリーニングに出すベストな頻度は?お手入れの目安と着物をきれいに保管するための3つのコツを解説

目次

着物のクリーニングやお手入れについて、「クリーニングに出す頻度や目安がよくわからない」と感じている方は多いのではないでしょうか。大切な着物をきれいな状態でキープするためにも、お手入れの目安や自宅で保管するときのポイントはおさえておきたいものです。

今回は着物をクリーニングに出す頻度について、着物の種類やパターン別にお手入れのタイミングをわかりやすく解説します。着物をクリーニングに出す頻度を減らすための適切な保管方法についても紹介しますので、着物のお手入れでお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

 

着物クリーニングの頻度|着物は着用ごとにお手入れに出すべき?

着物クリーニングの頻度|着物は着用ごとにお手入れに出すべき?

「着物は着用した後は毎回クリーニングに出さなくてはいけないの?」と思う方も多いようです。しかし、着物は洋服のように着る度にクリーニングをしないのが一般的です。

 

着物は毎回全体をクリーニングする必要はない

着物は洋服とちがい、着用ごとに全体をクリーニングする必要はありません。全体クリーニング=「丸洗い」を頻繁にしてしまうと、かえって生地を痛めることにもつながる場合もあります。

着物は着用した後の状態を確認しながら、その都度最適なお手入れを行いましょう。着物をクリーニングに出すタイミングについては、次の項目でパターン別に詳しく解説します。

 

汗抜きや部分的なしみ抜きの活用で着物は長持ちする

着物は、着用したときの様子で適切なお手入れを行うことが大切です。着物を頻繁に全体クリーニング=「丸洗い」をしてしまうと、生地が痩せる原因にもなります。

着用後の着物の状態によって「汗抜き」や「部分的なシミ抜き」を行うことで、大切な着物を長持ちさせることができますよ。着物クリーニングの種類と効果的なお手入れの頻度については後述します。

 

【パターン別】着物をクリーニングに出す頻度とタイミング

【パターン別】着物をクリーニングに出す頻度とタイミング

着物をクリーニングに出す頻度は、着物の種類や状況によってさまざまです。以下の4つのパターンについて、着物をクリーニングに出す頻度とタイミングを解説します。

  1. 着る頻度の多いカジュアルな着物:シーズン終わりにクリーニングへ
  2. 着る頻度の少ないフォーマルな着物:着用後にクリーニングへ
  3. 汚れやシミがついてしまった着物:すぐにシミ抜きに出す
  4. 帯や長襦袢:汚れたらクリーニング&半衿取り替え

    ①着る頻度の多いカジュアルな着物:シーズン終わりにクリーニングへ

    お気に入りの小紋や紬など、着る頻度の多い着物はシーズン終わりにクリーニングに出すのがおすすめです。目立つ汚れがない場合は、シーズン終わりに丸洗いに出して全体をきれいにするのがよいでしょう。暑い時期など、着用時に汗をかいた場合は汗抜きもあわせて行うのが◎。

    自覚がない場合でも、帯を締める部分に深いシワが入っている場合は汗をかいた可能性が高いです。着用時の汗をそのままにして長期間保管すると、裏地などが汗じみにより黄変することも。来シーズンに向けて、着用時の汗もきれいにしてからタンスにしまいましょう。

     

    ②着る頻度の少ないフォーマルな着物:着用後にクリーニングへ

    留袖や訪問着など、着る頻度の少ないフォーマルな着物は着用後にクリーニングに出して保管しましょう。

    特別な趣味や職業の方をのぞいては、短期間のうちにフォーマル着物を何度も着る機会は少ないはず。次に着る機会が数年後になる場合もあるので、長期間保管する前に丸洗い・汗抜きで全体をきれいにしておくのがきれいに保管するコツです。

     

    ③汚れやシミがついてしまった着物:すぐにシミ抜きに出す

    着用時に汚れやシミがついた着物は、着用後すぐににシミ抜きに出しましょう。着物についた汚れは、付着してから時間が経過すると取りづらくなってしまいます。とくに食事の食べこぼしや車のドアに挟んだときの汚れには油分を含んでいるので、早めのシミ抜きが肝要です。

    また雨やお酒などの「水汚れ」は、初心者にはとってとくに見つけにくい汚れです。「もしかして汚れたかも?」と思ったら、プロに相談することが大切です。汚れやシミがついてしまったときは、自分で対処せずに早急にお手入れに出しましょう。お手入れに出すときは、「汚れたときの状況」や「着物についた汚れが何か(水性か油性か)」を詳しく伝えることが大切です。さらに、

    1. 着用日
    2. 着用した場所や環境
    3. 飲食はしたか
    4. 天候はどうだったか
    5. 気温は暑かったか

    などもできるだけ詳細に説明しましょう。汚れたときの状況をもとに、プロが着物の状態や汚れ個所などをチェックして適切なクリーニングを提案してくれます。

     

    ④帯や長襦袢:汚れたらクリーニング&半衿取り替え

    帯や長襦袢は、汚れを確認したらクリーニングや半衿の取り替えを行うのがおすすめです。帯は、本来そこまで汚れることのないアイテムです。ただし、食べこぼしなどで汚れた場合は早めにシミ抜きをしないと後からシミが目立ってくる場合があります。とくに織りの帯は汚れが見づらいので、「もしかして汚れたかも」と思ったらお手入れに持参しましょう。

    長襦袢は、半衿が汚れたらその都度取り替えましょう。着物の下に着る長襦袢は食べこぼしなどの汚れの心配はありませんが、ファンデーションなどの半衿汚れは人目にも目立つので気を配る必要があります。半衿は消耗品なので、汚れが目立ってきたらその都度取り替えるのが基本です。加えて、汗をたくさんかいた場合は長襦袢も汗抜きをしておくと、長期間保管したときも黄変汚れが出にくいのでおすすめです。

     

    着物クリーニングの主な種類6つ&お手入れ頻度の目安

    「着物のクリーニング」とひと口に言っても、さまざまな種類があります。着物クリーニングの主な6種類と、お手入れ頻度の目安について解説します。

    【着物クリーニング6種類&お手入れ頻度の目安】

    1. 全体の薄汚れをさっぱりさせたいときは「丸洗い」
    2. 着用時にたくさん汗をかいたら「汗抜き」
    3. 汚れがついてシミになってしまったら「シミ抜き」
    4. 古い汚れや汗による変色のシミは「黄変直し」
    5. 着る前のシワが気になったら「プレス加工」
    6. カビが発生した着物は「カビ取り」

      ①全体の薄汚れをさっぱりさせたいときは「丸洗い」

      全体の薄汚れをさっぱりさせたいときは「丸洗い」

      着物を全体的にきれいにしたいときは、「丸洗い」がおすすめです。「京洗い」とも呼ばれます。着物のクリーニング方法としてもっともベーシックなのが丸洗いです。着物を一旦ほどいて水洗いする「解き洗い張り」よりもローコスト&短期間で着物全体をきれいにできるので、着物の着用頻度が高い方からも支持されています。

      丸洗いは主に油性の汚れに対応しています。油性の皮脂汚れなどは落とせても、汗や水分の汚れはきれいにならないので「汗抜き」などの他のクリーニング方法と併用する必要があります。丸洗いできれいになる汚れ・きれいになりにくい汚れを以下の表にまとめました。

      丸洗いできれいになる汚れ 付いたばかりの汚れや油性の汚れ、全体のうす汚れ・軽度のカビ、衿・袖口の皮脂汚れ、裾の軽度の汚れ
      丸洗いできれいになりにくい汚れ 汗、水性の飲食物(ビール・ジュース・ワイン・ウーロン茶・醤油・ソースなど)、泥はね、雨ジミ、タンパク質汚れ(血液・肉汁・母乳など)

       

      ただし、丸洗いの頻度が多いと生地が痩せてくるので出しすぎには注意が必要。部分的な汚れには、シミ抜きを行うのがおすすめです。

       

      ②着用時に汗をかいたら「汗抜き」

      着用時に汗をかいたら「汗抜き」

      着用時に汗をかいた着物は、着用後に「汗抜き」をするのがおすすめです。汗の成分の99%は水分ですが、わずかに塩分と尿素を含みます。汗が付着したままの着物は時間が経過すると成分が変化し、黄ばみの原因に。汗の汚れは時間がたつにつれて落としにくくなり、やがて黄変となります。着用直後の汗は目に見えにくいので、「汗をかいたかも」と思ったら早めに汗抜きに出すことが大切です。

      汗をかいているかどうかの判断基準は、帯を結んだ部分に深いシワがあるかどうかです。着物に限らず生地は汗などの湿気によってシワが定着します。汗をかいていないと思っても、着用後の着物にしっかりシワがついている場合は汗抜きに出すことをおすすめします。

       

      ③汚れがついたら「シミ抜き」

      汚れがついたら「シミ抜き」

      食べこぼしなどの汚れがついた着物は、早急に「シミ抜き」に出しましょう。衿や袖口、裾などの汚れが目立ってきたときも部分的なシミ抜きがおすすめです。汚れには大きく分けて「油溶性」と「水溶性」の2種類があります。汚れの種類によって薬品や落とし方を使い分けてシミ抜きを行います。

      • 油溶性の汚れ:ベンジンが基本
      • 水溶性の汚れ:水洗いが中心

      もちろん混合のものもあり、順番にしみ抜きを行ないます。汚れの4つの区分をご紹介します。

      【汚れの区分】

      水溶性の汚れ

      雨じみ、泥ハネ、汗じみ、水溶性の食べ物、酒、ビール ワイン、コーヒー、ジュース(色素の強い汚れは落ちにくい) 血液など(タンパク質系の汚れは落ちにくい) 他

      油溶性の汚れ ファンデーション、口紅、ケチャップ、マヨネーズ、ドレッシング、チョコレート、機械油、ボールペン、皮脂 他
      混合の汚れ マヨネーズ、パスタソース、ドレッシング
      落ちにくい特殊な汚れ

      カビ、サビ、タンパク質、接着剤、墨汁 箔加工時の糊

      着物のシミは時間が経過するにつれて落としにくくなるため、汚れがついた際はできるだけ早めにシミ抜きに出すのがおすすめです。

       

      ④古い汚れや汗による変色のシミは「黄変直し」

      古い汚れや汗による変色のシミは「黄変直し」

      着物や長襦袢の古いシミは「黄変直し」できれいになる場合があります。黄変の原因は、シミや汗が付いたまま長期間保管することで生じます。さまざまなシミが長時間空気にさらされることにより緩やかに酸化し、黄ばみが定着します。通常のシミ抜きでは落とすことが難しいため、黄変直しの処置が必要となります。

      黄変直しは、漂白作用のある薬品を用いて熱を加え、地色と一緒に黄変を抜く高度な技術が必要な加工です。ただし生地の状態や種類によっては破損の危険があるなど、黄変直しの難しいものもあります。その場合、工芸修正や染め直しなども一緒に相談してみるとよいでしょう。

       

      ⑤着る前のシワが気になったら「プレス加工」

      着物クリーニングの主な種類6つ&お手入れ頻度の目安

      着る前の着物がシワになっていたら、プロによる「プレス加工」を依頼するのがおすすめです。とくにフォーマルな席で着る着物は、着用時にシワのないきれいな状態で着付けをお願いしたいもの。着る前に着物をハンガーにつるし、目立つところにシワがないかチェックしましょう。

      自分でアイロンをかけることもできますが、着物にアイロンをかけることに抵抗のある方は多いはず。万が一大切な着物の生地を痛めたり、ぺったんこにならないよう、プレスは着物の扱いに慣れたプロにお願いするのが安心です。

       

      ⑥カビが発生した着物は「カビ取り」

      カビが発生した着物は「カビ取り」

      カビが発生した着物は、なるべく早めに「カビ取り」に出しましょう。白いポツポツがあったり全体的にカビ臭い着物は、カビが発生している可能性が高いです。カビの生えた着物を見つけた場合、タンスから出してビニール袋に入れるなど、カビが周囲にうつらないよう配慮する必要があります。一緒のタンスに入っていた着物や帯もカビていないか、全体をチェックすることも大切です。

      カビを落とすことができるカビ取りですが、カビが原因で着物が黄色・茶色に変色してしまった部分はカビ取りや丸洗いでは直すことができません。変色を直すため、別途補正作業を行いカビによる色落ちを修復していきます。

       

      着物をクリーニングに出す頻度を減らすための保管&お手入れのコツ3つ

      着物をクリーニングに出す頻度を減らすための保管&お手入れのコツ3つ

      着物のクリーニングについては、「最低限のクリーニング回数で済ませたい」「なるべく楽にきれいな状態の着物をキープしたい」と考える方も多いのではないでしょうか。そんな方のために、着物をクリーニングに出す頻度を減らすための保管方法と、お手入れのコツ3点を紹介します。

       

      ①着用後の「陰干し」

      着物を着用した後は、着物ハンガーにかけて半日~1日程度「陰干し」しましょう。陰干しをすることで着用時の汗などの湿気を飛ばすことができます。湿度がこもった状態でタンスにしまうとカビや汗じみの原因にもなるので、着用後はかならず陰干しを行いましょう。

       

      ②定期的な「虫干し」

      定期的な「虫干し」も着物をきれいな状態で保管するために大切です。「虫干し(むしぼし)」とは、着物や帯の湿気をはらい、害虫をのぞき、しみの点検をする昔ながらの着物のお手入れ方法です。虫干しの方法としては、日の当たらない場所に着物や帯を裏返しにして着物ハンガーで半日~1日程度干します。

      年に1~2回行うのが理想です。なかなか虫干しの時間が取れない方は、天気のよい日にタンスの引き出しを開け、扇風機の風を1日送り続けるだけでもOK。着物や帯に風を通すことで、カビの原因となる湿気を飛ばすことができます。お手入れのシーズンは、秋雨シーズンが過ぎた10月ごろの「虫干し」、雪のシーズンが過ぎた3月ごろの「寒干し」、梅雨が明けた7月下旬の「土用干し」がおすすめです。

       

      ③忙しい人には「保管サービス」や「保管パック」もおすすめ

      忙しくて虫干しや定期的なお手入れが難しい方は、「保管サービス」や「保管パック」の利用もおすすめです。どちらも着物をなるべく楽に、きれいな状態で保管するためのサービスです。それぞれのサービスについて詳しく紹介します。

       

      着物保管サービス「RAKURA(ラクラ)」

      着物保管サービス「RAKURA(ラクラ)」

      「RAKURA(ラクラ)」は、着物の保管に不安のある方や収納場所のない方の代わりにプロが着物を保管してくれるサービスです。着物の保管でもっとも気になるのは湿度です。RAKURAでは、年間を通して10度~25度、湿度45%に保たれた保管ルームで着物を保管するので湿気によるカビの心配がありません。

      さらに24時間監視のセキュリティシステムで、大切なお着物をしっかり守ります。保管中のお着物は、着用予定にあわせてホームページからいつでも配送してもらえます。万が一なにかあったときにも安心な、追加補償の損害保険もご用意。

      • 「大切な着物がカビないか心配」
      • 「虫干しの時間がとれない」
      • 「着物の収納場所がない」

      という方は、えり正の着物保管サービスのご利用がおすすめですよ。

       

      シルクパック・着物保管パック

      シルクパック・着物保管パック

      「シルクパック」「しあわせパック」は、長期間着用の予定がない着物や長襦袢、帯を安全に保管するためのパッキングサービスです。着物を専用のラミネートフィルム(シルクパック)または透明特殊フイルム(しあわせパック)の袋に入れ、空気を抜いて真空にした後、窒素ガスを充填します。

      カビ・虫・湿気・黄変などを防ぎ、酸素センサーでパック内の酸素量をチェックし目に見える形でお取替え時期が判別できます。保管する環境によって異なりますが通常は約2年使用で、長期間の保管も安心です。

      着物を2〜3枚一緒に保管もできますし、着物と一緒に帯や小物をまとめて保管ができますので、パック別に「振袖一式」や「喪服夏物一式」という具合にタンス内の整理整頓にも喜ばれています。

       

      着物のクリーニングは「着物アフター診断士」に相談を

      着物のクリーニングは「着物アフター診断士」に相談を

      今回は、気になる着物のクリーニング頻度について目安やタイミングを詳しく解説しました。着物のお手入れは適切に行うことで、大切な着物を長持ちさせることができます。神戸と福山にある呉服専門店えり正には、「着物アフター診断士」という着物メンテナンスのプロが在籍しています。ご持参いただいた着物を拝見し、状態に応じてベストなお手入れ方法をご提案します。着物のお手入れについてのお困り事は、どんなことでもお気軽にご相談ください。

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